ハニーチュロス

 ミスタードーナツでドーナツを買う。好きなドーナツは、上から順番に、ダブルチョコレート、チョコレート、チョコファッション。ぜんぶチョコ系。

 たくさんたくさんドーナツを買うのが好きだ。できるなら、お金と胃袋と摂取カロリーが許すなら、私はたくさんたくさんドーナツを買いたい。ミスドのドーナツは紙の小さな袋ではなく(ドーナツが2、3個入るサイズ)ではなく、取っ手が付いた箱に収まる量を買いたい(目安7~9個)。

 おぼんを左手にトングを右手に、ケースの中に陳列されたドーナツを眺める。推しドーナツのダブルチョコレートが不在の為、仕方ない、チョコレートをおぼんに載せる。

 と、若い男性4人組が入店。爽やかにおぼんとトングを手に取り、私の後ろに並ぶ。そのうちの一人、おそらく私のすぐ後ろにいる人だろう、「ハニーチュロスなんだよなーやっぱり」と言っている。「あー、ハニーチュロスないっぽい、どうしよー」とも言っている。そうか、チュロスないのか。まあ私は選ばないから関係ないけど。チュロスがなくてもさしたる痛手ではない私は引き続きドーナツを真剣に選んでいく。ポン・デ・リング、チョコリング、エンゼルクリーム・・・。ぬ。チュロスチュロスだ。あるではないか、ハニーチュロス。しかもラスト1つ。

 ここで、要らぬ好奇心が湧いてくる。後ろの男はたぶんチュロスの存在に気づいていない。だから今ここで私がチュロスを取ってもばれない可能性は、ある。橋を渡るか、渡るまいか。逡巡したその刹那、男の声で「あ、チュロスあるやんけ、やったー」というのが聞こえた。ちっ。

 お会計になった。店員さんがドーナツを手早く袋に詰めていく。隣のレジではチュロスを無事に獲得した男もお会計をしている。横目で隣の様子を窺うとおぼんには4つほどドーナツが載っていて、私は「やるやんけ」と思った。一人でドーナツ4つを食べるのかしらん。いいなあいいなあ。

 そうして私は袋を受け取ってミスドを後にした。ちなみに、ハニーチュロスは正式名称は「ハニーチュロ」だった。そして、私は生まれてこの方ミスドの「ハニーチュロ」を食べたことがない。今日のことを覚えていたら、いつか再びミスドを訪れた暁には、ハニーチュロを買ってみたいと思う。おいしいのだろうか、ハニーチュロ