不機嫌の果実

あなたの不機嫌は私を縛るのだと知っているならまだしも知らないということの罪は重たいと私は思う だから私は3cm大の飴を常備する 真っ赤な色をしたいちご味の飴をおや指とひとさし指でつまんであなたが口を開けたら口の中へ押し込んでやる カランコロンと舌で飴を玩んでいればいいわ いつまでも いつまでも

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 他人の不機嫌で今更自分を責めたり落ち込むことはないけれど、それは他人の不機嫌に対し完璧な耐性を得たということを意味しない。不機嫌は弱毒性で、沁み沁みと私の体を毒すことに変わりはない。

 不機嫌になることについては私の得意種目だから気分をすぐに変えることはどうしようもなく難しいというのは共感しつつも、しかし、それはものすごく幼稚な振る舞いなのだと私は思うし自分がそうした振る舞いをするとき、申し訳なさでいっぱいになるしどうにか立て直そうと苦慮し、うまくいかないことに動転する。だからこそ、喜んで自分自身の機嫌を損ね、他者に平然と毒をばら撒く人の横暴を私は不快に思うのかもしれなかった。

 白い砂糖の粒が表面にちりばめられたいちご味の飴は実際に私が好きだった飴で、大粒の飴を口に含めばきっと不機嫌も直るでしょう。そう思って、詩を書いてみた。私は私の機嫌をどうにかこうにか保つことで精いっぱいで、あなたの機嫌まで面倒はみていられないのだ。