鳩の足音

 川の横の遊歩道を歩く。たくさんの鳩が道を占領してちんたらちんたら歩いている。ふてぶてしいったらありゃしない。私は歩を緩めるわけもなく、早足になるわけでもなく、淡々と歩く。そろそろ鳩を蹴り上げそうな距離になって初めて、ばさばさと翼をはためかせ、あるものは脇に、あるものは遥か前方へ飛んでいった。と、一羽の鳩が川沿いに並ぶ手すりの上にすとんと降り立った。そのまま器用に歩いている。鳩が私の目線の高さで歩いている、ということになる。トコトコトコと音がした。手すりはアルミのような軽い素材でできていて、鳩の足には爪がある。それが鳴っているのだろう。鳩の足音。思えば初めて聞く音だった。ということで、私は「わはー」と一人で声を上げながらなおも歩く。良いものを見たと思う。あるいは聞いた、か。