ロースかつの作法

 ふらふらと街歩きをしていたら見つけたとんかつ屋。昼には少し早いが、この機会を逃すとさらに並びそうな気配だったので並ぶことにする。

 調べない。この店を、評価を調べたい、そんな欲求を抑えるのに苦慮している自分がいて悲しい。生活の向上を願うのは悪いことではないが、失敗を、間違いを過度に恐れる心を本当にどうにかしなければならないと感じる。そしてより良きものを志向することもどうにかしなければ。

 店の女将さんにあらかじめ注文するシステム。定番らしいロースかつ定食を。「うちはちょっとご飯多いですけど大丈夫ですか?」大丈夫だと思います。私、白米好きなので。10分待たず入店することができた。温かいお茶が嬉しい。ほどなくしてロースかつ定食がやってきた。

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 定食が好きだなあと思う。ご飯と、汁物と、メインのおかずと、副菜と、漬物と。それぞれをどのように食べるのか、パズルのように組み立てながら食べるのは、大袈裟に言えば「救い」で。ゆっくり、丁寧に、食べることに集中する。マインドフルネス的振る舞いを実践できる機会。ラーメンとかでも可能だけれど、ひとつの器ではなく、たくさんの皿に分かれているとより効果を増す、気がする。定食なら可能。ひと切れめは何もつけずに、ふた切れめは辛子をつけて、以降は卓上のソースをかけて。もちろんきゃべつも一緒に食べよう。時々味噌汁(嬉しいことに具はしじみ)を啜って、ご飯をかき込んで。

 食べられないかもしれないと思っていたけれど、ぺろりと完食。胃もたれもしなかった。ガラガラと引き戸をあけて外に出ると、世界は私に遅れてちょうど昼食時。人の流れと逆行するように、日が差している方へ歩き出す。

 ジャンキーな食べ物も相変わらず好きだし、毎日の食を「より良いもの」にしていきたいとは思ってないけど、時々、ゆっくりと丁寧に食べられたらいいなとは思っている。