煮詰まる日記

伯母からリンゴをもらう。しかし最近気づいたことなのだが、私はあまり果物を食べない、いや、食べようと思わないみたいで。それは「果物が嫌い」とイコールではないし「果物を食べたくない」ともイコールではない。ただ、果物を食べようと思わない。

その理由はなんだろうと考える。食べるときにいちいち手を入れなければいけない(皮を剥く、切る、べとべとになった手を食器を洗う、などなど)からだろうか。多分そうだろう。そして手間を上回るほどの欲求 ー私は果物を食べたい!ー が起こらないのだ。

 

リンゴ。

 

信号が青になるのを待ちながら、「ふむ。「煮詰まる日記」というのはどうだろう?」 と思った。今日のこの記事のタイトルのこと。

煮詰まる。言うほど煮詰まっているのか? Yesとも言えるしNoとも言える。どうやら私は出歩かなければ停滞するタイプの人間で、そろそろ出歩かなければならないと思っていたところだから煮詰まり度はまあまあ高い。しかし一方で致命的なレベルでもない。

 

煮詰まる。

煮詰める。

 

大量のリンゴを前にして私にできることは、とりあえず煮詰めること。ほどほどに潰して鍋に砂糖と一緒にぶっ込み、ぐつぐつと煮ること。

 

煮詰まる。

煮詰める。

バツ丸くん。

 

サンリオのキャラクターに、バットばつ丸ってのがいて、私の中での彼の正式名称は「バットばつ丸くん」なんだけど正確には「バットばつ丸」であった。今日の今まで、ばつ丸くんはカラスの子だと思ってたのだが、ペンギンの子らしい。基本的には悪ガキらしいがプロフィールから「なんか大変そうだな」感がすごくて熟読してしまった。

 

私はこの文章を駅ビルの8階、たくさんの飲食店があるフロアの隅にある椅子に座って書いている。買ったものが出来上がるのを待つ空白の時間に。

と、私の隣の隣の隣に座る男が立ち上がる。彼の元に向こうから女が駆け寄る。彼女のヒールが弾む音。足音で人間の気分がわかる能力、は持ってないけど、それぐらいはわかる。

この二人、どういう関係なのかしら。

最低だな、私。大変に失礼なことを考えた。

でもそんな組み合わせだったから。

不倫。それが倫理(?)的にどうなのという話がしたいの? いいや、そんなことはない。

少なくとも不倫はとてもつらいこと。特に男女の場合は女性が苦しみそうなところがなんか嫌だな。でも思うけど、不倫するなら突き進めばいいのにどうしてそれをしないのだろう。一方で本人が楽しいのであればいいか。楽しいのは、ちょっと羨ましいな。

恋というのが衝動的で、理性的の対極にあるものなら、私のちっぽけな理性と丁々発止の盲目的な恋はあるかしら? まあいいか。そんなこと考えたところで。

 

木篦でリンゴの水分を飛ばすように、文章を書くことができたらよかった。物事を煮詰めるには時間が必要だった。万年筆が篦で、リンゴは、私が見ているもの聞いているもの。ノートが鍋で、火は私の体力。

煮詰まっているのかい? よくよく考えてみれば違うみたいだった。だって私は煮詰めていないのだから。ただ溢れるばかりのリンゴを前に横になって寝ていただけ。だから、起き上がりコンロの前に立ちジャムを作ろう。でなければ、煮詰まることすらない。