雨が降ってきた

 川を眺めることができるその場所で柵に近寄ると薄墨を塗りたくった色をした川をぼうっと見ていた。右手にはカフェオレ(セブンイレブン)。おかしいな、ガムシロップを入れたはずなのに全然あまくない。

 手紙について考えていた。綴ることは糸を通した針を動かすことと等しいように思えた。一つひとつ最適解を模索する。手のひらからこぼれていく水。針、糸、右手と左手。

 プラスチックの容器をふるふると揺らすと、透明な氷がぐらんぐらんと回った。いつの間にかカフェオレを飲み干してしまったようだ。なんだか勿体ないことをした。そして眼前を白い船が横切っていく。

 雨が降ってきた。冷たい雨だった。ぽつり、またぽつりと頬に。そのとき私は「自分は雨に降られるのだ」と思った。