静かな心

 相変わらず走っている。別に楽しいわけではないのだが、きつくない程度に走っているので続いている感じ。ああ、ただ一つ。走り終えて適当な距離をクールダウンに歩くのだけれど、そのぽっかりと空いた時間に好きな音楽を聴くのは好きだ。本当に、それは、好きなことだと思う。音楽がするすると無理なく自然に体に入ってくる感じがする。
 江國香織『泣く大人』を読んでいる。以前読んだことがあるのをすっかり忘れていた。二回読んでも好きだなと思うのでそのうち買おうと思う。今月は本屋さんに行けなさそうなのでいっそのことかねてから買いたいと思っていた本をまとめて注文してしまおうか、自分へのプレゼントとして。そんなことを考えて、そうだ、『泣く大人』の話。
 こんな文章がある。

 書名も著者名もさっぱり思い出せないのだけれど、いつか読んだ本のなかに、こんな言葉があった。

  あらゆる快楽のあとにまだ
  眠るという快楽がひかえている

 これは、ほとんど私のモットー。逆の言い方をすれば、たとえば憂鬱な一日にも、少なくとも眠るという快楽はあるのだ。

  わかる。くたくたになるまで歩いたり、ジョギングした日の睡眠はうっとりするぐらい気持ちがいい。最高だと思う。

 帰り道、見上げた夜空にぽっかりと浮かぶ月がたいそう綺麗だった。夏目漱石の『こころ』は良いタイトルだなと、ふと思った。人の心について考えているの? 私。どうだろうね。ああ『シェル・コレクター』もいい小説だと思う。静かな文章を書きたい。静かな、文章。悲しい。この悲しさが朝目覚めれば消えてしまうことも悲しかった。ぎゅっと一瞬を保存できたらいいのにね。もう寝ようね。