パルスオキシメーター

明太子のパスタソース

 乾燥パスタを熱湯で茹でる。茹で上がったらざるにあけて、湯をきった麺に明太子のパスタソースをかける。ソースが全体にまわるよう、箸でかき混ぜる。刻み海苔をその上に大量に散らす。麺が見えなくなるまで、海苔を。
 私はそれを、テーブルに広げた新聞を読みながら黙々と食らう。コロナ、甲子園、高校総体、詩、みずほ銀行のシステム障害、アフガニスタン情勢、今秋の自民党総裁選。パスタと時事を咀嚼する。

パルスオキシメーター

 注文していたパルスオキシメーターが届く。いつも「○○に届きますよ~」という連絡が来るから荷物の心づもりができるものだけれど、今回は不意打ちだったので驚く。その方が嬉しいしワクワクするよね。なお、発送しましたメールは商品が届いてから送られてきた。
 私の住む自治体がコロナの自宅療養者に対してどのようなアクションをとっているのか、いまいちわからない。駄目だったときは駄目なのだろうが(そうやって無理に自分を納得させ現実を受け入れようとするから今のような状況になってんだろうが、と思うけれど、元来私は無理な要求をそのまま「そういうものか」と飲み込んでしまいがち)この機会を逃すとパルスオキシメーターなんて買おうと思わないだろうという好奇心も相まって注文してみた。
 酸素飽和度と脈拍を主に測ることができる。クリップのように指を機械に挟んで計測する。酸素飽和度98、脈拍75。自分の体に関する数値なんて知らないに越したことはねえな、と思いながら、面白くて何度も測る。そういう余裕がこれから先も持てるといいのだけれど。

嗅覚

 部屋にはシトラス系の香りづけのスプレーがあって、いくら使っても無くなる気配がない。私は時々スプレーを振りかける。ところが噴射して香るはずの匂いが一切感じられない。血の気が引いた、という夢を見た。
 夢を夢だと気づけないタイプの人間なので、当然だが目覚めは最悪だった。コロナウイルスにとうとう感染してしまったのか。起きがけ、ドキドキしながら、スプレーを手に取ると、部屋でシュシュッとした。きちんと柑橘系の鋭く爽やかな香りがした。安心した。勘弁してほしい。嗅覚とか味覚とか、そういうものを意識させないでほしい。匂いとはなんや、味とはなんや、考えたら最後、自分の足元にある地面が崩れる気がするから。そういうことは考えない方が幸せな気がするのだ。