断線

 昼寝がきらいな子供だった。夜、眠りにつく以外で、例えば日中にちょっと寝るというのも嫌だった。極度に疲れているときは電車やバスで眠ることもあるのだけれど、社会科見学の帰りのバスの中では、一人だけ起きているような、そういう子供だった。

 疲れていた。人と会うと疲れるし、人と喋ると疲れる。疲れの質が違うみたいで、私はふらふらだった。そうだ、仮眠をしよう、と思った。眠らなくても、15分ほど横になるだけで違うと聞く。私は横になり、タイマーを15分セットして目をつぶった。20時15分のことだった。
 起きたら22時30分になっていた。寝過ぎた。

 野生生活100のアップルサラダをとくとくとくとコップに注ぐ。起きがけに飲むにはこのジュースはいささか甘すぎる。私は顔をしかめると、氷と水で野菜ジュースを薄める。薄めたところで甘いのに変わりはなく、かえって量が増えてしまったジュースを持て余す。一気に飲み干すと背徳的な味がした。私は野菜ジュースに甘えていると思った。
 同じ一日のこととは思えなかった。頭は多少クリアになったし(といってもまだ眠たい)使える程度には回復したけれど、一日が変な箇所で断線した、そんな感じで面白い。日が沈んでからの「昼寝」は、午後の昼寝とは勝手が違うみたいだ。

 私の一日はまだ終わっていない。これからどうやって終えようか考えているところだ。微睡みの残滓、心地よさが体に残っていて気持ちが悪い。しかし、それを振り払って何かをするには疲れている。私の一日はまだ終わっていない。嬉しいようで、ちょっと厄介。