買い物するのに1時間ほど歩く。公共交通機関を使えば30分かからないじゃないと言われるだろうけれど、例えば、私は、JRとメトロの乗り換え5分が億劫だ。それなら30分ほど歩いて乗り換えを回避しようなんて思うわけで、今のところ、私は時間をかけることや歩くことをそれほど面倒なことだと思っていない。面倒が「解決や処理するのに手数がかかってわずらわしく思われること」だとすれば、30分歩く ＞ 5分の乗り換え というのも説明がつくのではないか。とにかく歩いた。
道中ずっと雨が降っていた。
飲み物を持ってきてなかったので、途中の自販機で伊右衛門を買った。110円だったから。
てっきり500mlだと思っていたのに、実際ガコンと落ちてきたのは415mlくらいの伊右衛門だった。そんな伊右衛門見たこと無いのだが。110円だ！150円じゃない！と意気揚々と小銭を投入したものの「プライスダウン！110円～」の文字に釣られた感が否めない。私は「騙された～～～」と頭を抱える。実際のところ、騙されたというよりは、私が都合よく誤解していたのだろうけれど。
片手は傘で塞がっていて、雨の時はこういうのが少し煩わしい。写真を撮るにも、ペットボトルのキャップを捻るにも、スマホを操作するにも（世の中のスマホはおしなべて大きすぎるのだ）。
黙々と歩く。そういえば、コロナワクチンの副反応としてごく稀に心筋炎があるそうだけれど、昨日から時々胸のあたりに痛みが走るのが嫌な感じだ。何も無ければいいな、時々の痛み以外、息切れもなければ咳もないから様子見するつもりだが、閑静な住宅街、やがて水田やら中古車ディーラーやら怪しい塗装屋やらしかない人気のない道を歩いていると、今ここで何か調子悪くなったら終わりだな～と思う。そこで、私は何かあってもいいように、付焼刃的に「119」に電話した時のやりとりを頭の中でシミュレーションし始める。そもそも1時間もかけて歩いて買い物に出かけるのが間違っていた。それにすぐに救急搬送されるかも定かではないこの状況。
稲。この時期の稲は何故かミルクのような甘ったるい匂いを放つ。匂いというのは主観的なもので、さて他の人はどんな風に感じるのだろう。根元がしっかりしていて、このまま黄金色になるまで生長するといいなと思う。
雑草が繁茂する。気が付けば、側溝の隙間やだだっ広い空き地の砂利の間、道の脇にある躑躅の茂みからにょきにょきと生えている。人も、自転車も車も通らなくなったアスファルトを想像する。きっとアスファルトを下から突き破り雑草が生え、樹木の種子が宿り、植物に埋め尽くされてしまうのだろうな、人工物が。そう、今、私は整備された土地に生きている。
日本なんかは今後人口をある程度集約せざるを得ないのだろうか。だとすると、放棄される場所がたくさん出てくるだろう。植物が人工物を飲み込んでいく風景が気になってきた。
どどーんと現れたゴルフ場。平日だからか、それともお盆だからか、休みだからか、気持ちのよい音は聞こえない。
パスケースとキーホルダーを買った。68％引きで安くなった。
