連続した死骸

続・牛乳石鹸

 時々牛乳石鹸で手を洗う。潔癖なのではなく、牛乳石鹸は良い匂いであることに気づいたから。わしゃわしゃと洗って水で濯いで軽く水気をとった手のひらで、口と鼻を覆う。やっぱり良い匂い。
 どうしても湿気がこもる場所に置いているからか、開封して使って一日後にカビらしき黒点が表面についていた。むーむー。私はため息をつく。がっかりはしていない。そもそもこの世の中で完璧に清らかであることは不可能な話なのだ、多分。仕方ないこと。・・・。本当に?

仕方のないこと

 ぼそりと「仕方のないこと」と呟くたびに「本当か?」と自己ツッコミするようになった。仕方のないこと。その呟きが積り積もっての、今の世の中の情勢である気がするからだ。自分の中で完結する話ならいいけれど、誰かに対して「それは仕方のないことなのだ」と言葉かけるときは注意せにゃならんな、とふと思った。相手を傷つけているかもしれないし、それは仕方ないことではないかもしれないのだから。

連続した死骸

 灼熱のアスファルトコガネムシがぐしゃりと潰れて息絶えている(虫に「息」という概念はあるのか)。数歩進めたところに、今度は蝉がスルメイカの日干しのような、見事なぺたんこ状態になっている。夏は死の存在を近く感じる。風はあんまり吹いていない。誰が、何が、彼らを吹き流すのか、洗い流すのか。そもそも流されるべきなのか。私は彼らに「消えてほしい」と願っているのか。

 粉々の茶けた一匹風死せり