扇風機

玉子とニラとエビの炒め物

 走る。面白いぐらいに汗をかく。わはは。
 煮詰っていたので昼食は中華料理屋とする。風が吹き、雲は白く、空は青い、道行く人が誰もいない昼下がり、私は一人歩く。
 四人掛けテーブルの席に座ると、ラミネート加工された定食メニューを左上から見ていく。決め手に欠ける。離れた席に座っていたサラリーマンが「日替わり定食」と言っていたので、私もそれに倣う。日替わり定食の内容も値段もわからないけども。
 そうして水が注がれたグラスに口をつけ、少し湿らせると、買ったばかりの本を徐に取り出し読み始める。アメリカをめぐるフィールドワークの旅の記録。きりのいい部分まで読むと、書店で買った時についてきた栞を挟みこみページを閉じた。ふう、と息をつく。定食はまだやってこない。
 天井には小さな扇風機がいくつも取り付けられていて、それぞれバラバラな方向に左右首を振っている。厨房の方から中華鍋が振るわれる音が聞こえ、他の客がぼそぼそと小さな声で喋っている。
 女の人が定食を運んできた。今日の日替わりは玉子とニラとエビの炒め物だった。小皿でザーサイとサラダ、スープと杏仁豆腐、ご飯。このたっぷり感が中華料理屋の定食を愛すべき理由。定食は、美味しかった。

腹斜筋

 1リットルのペットボトルを水で濯ぎ水道水を詰める。簡易的なダンベルを拵えると、腹斜筋に効く筋トレをする。筋トレは嫌いではないが、筋トレだけをするのは苦手だな、と思う。走りたいし、泳ぎたい。体を動かして課題が見つかる。動かしづらいところ、力が足りないところを筋トレで補う。例えば腕を掻く筋力が足りないと感じる。運動してなくても足は動かすが、腕の筋肉は使わない分、足に比べて落ちやすいのだと思う。現役時代より相当筋力が落ちている。
 唐突に始めた腹斜筋の筋トレは、効いているのか効いていないのか、いまひとつわからない。筋肉が怠くならないから、こちらが飽きるまで続けられそう。実際、飽きたところでやめた。翌日。ちゃんと筋肉痛だったので、良かった、と思った。

団子

 コーヒーを飲みながら帰ろうと思ったので、少し迂回してコーヒースタンドに寄る。その途中に和菓子屋があって、これが入りやすい店構えなものだから、団子を一本と白玉ぜんざいを買う。人気のない道まで出ると、私は団子を取り出し、歯を使って串から団子ひとつ抜き、それを歯で押しつぶす。団子事情がわからないが、時間が経つと固くなる食べ物なのだろうか、その団子は予想より柔らかくもちもちとしていて、奥歯で押しつぶすとほろりと溶けていった。米の淡白な甘さに、みたらしのねっとりとした甘みが絡んでくる。美味しい。団子を食べ終えると、口の周りについたみたらしを、舌で舐めとる。みたらしだけだと、甘すぎる。
 コーヒーも美味しかった(久しぶりのコーヒーだった。普段コーヒーはあまり飲まないので)。ただ、団子の余韻が後を引いていて、つまり今日は団子の日だった。白玉ぜんざいは冷蔵庫で冷やして少しずつ食べるつもり。

扇風機

 扇風機の首が壊れた。具体的に言うと、カクカクカクと角度を調節できる機構がぶっ壊れた。最大限斜め上を向くか、斜め下を向くか、しかできない。首が滑らかに上を、下を向く。丁度良い角度で止まってくれないけれど、その滑らかさは人間の首みたい。こちらが対応していけばいいので、引き続き使っていく。