はためく幟

 走る。
 少しずつ少しずつ速くなっている。亀が歩くような速度で、私はゆっくりと速くなっている。当たり前だ。だって走っているのだから。ぽつりぽつりと街灯が首を垂れている。私は彼らが項垂れることでできるアーチの下を通り抜けていく。前方からごおおおおおおおおという音を鳴らしスケートボードがやってくる。あっという間にすれ違い、どこかへ行ってしまった。しばらくすると不気味なほど青白い光を発するコンビニエンスストアが見えた。その周りで幟がはためいている。バタバタと。現金を持っていない。何もチャージしているものがない。私とソフトクリームとの距離は一億光年、汗が頬を伝い、ぽたりとアスファルトに落ちゆく。信号が青になったので私は再び走り始める。さらにその距離は遠のいた。さようなら、また今度。