私たちはパッキリしていない

 アイドリッシュセブン(略してアイナナ)というアイドルゲームを始めた。

 挫折しがちなチュートリアルを何とか越えて、私は毎日作業の初めにアイナナを10分くらい遊ぶというルーティーンを形成しつつある。アイナナで遊んだ後に本を読んだり、好きなことについて調べたりする。ああ、仕事はまったく別ね。あればルーティーンの外にある異形の存在だから。

 色々なキャラクターが登場する。あまりのパッキリさに目が眩む。何がパッキリしているかというと、彼らの個性だ。

 

 昔から、具体的な他者を言葉で表現するのが苦手だった。行動とか容姿とかそういう表面的な部分を説明するのは問題ないのだが、その人の内面的な部分、つまり「性格」と呼ばれるものを言葉で言い表すことができない。みんなある意味で優しいしある意味でずる賢いし、ある意味で怠惰だしある意味で真面目だし。そうそう、私はよく「真面目」と言われるが、「え?みんな真面目じゃない?」と不思議に思って首をかしげてしまう。みんな真面目でしょ。というか真面目って何?

 フィクションのキャラクターほど、私たちはパッキリしていない。お互いの差異はもっと曖昧でぼやけている。それを退屈とか物足りないとか思う人がいるのだろうか。わからんけど。

 

 アイドルになりたいと思うことがある。アイドルになったら、多分他の人は私のこと、もっとわかりやすく端的に言葉で表現してくれる。私が知らない私を教えてくれる。でも、このぼんやりが本来の姿であって、パッキリに惑わされては駄目なのではと思う。所詮同じホモ・サピエンスなのだ。

 

 私は他者を言葉で表現するのが苦手だ。あなたがどういう人なのか上手く言い表せない。そこに苦しさがあるのは、パッキリさせたい欲求があるからかな。パッキリさせないままの状態を維持する強さが欲しい。