EUPHORIA

仕事を終え入口の自動ドアを出るとほっと息を吐く。思ったほど暑くはなく、風が吹いていて安心する。風があると空気が流れていくようで嬉しい。

風を撮れたらいいのに。まあいいや。私はテクテクと歩いていく。なかなか日が暮れない。川を渡る。ビルとビルの間から差し込む夕日が、水面でオレンジ色に揺らぐのを眺める。

頭上に広がる空は、冬のそれほど青くなく、ぼんやりと白っぽい。そして、もっと輪郭の濃い白が左から右に横断していて、あれは飛行機だ。

ふと、EUPHORIAという曲が頭の中で流れる。首にかけていたヘッドフォンをつけると、Apple Musicの検索バーで「EUPHO」まで打ち、自動で出てきた検索予測から柴咲コウのシングルを見つける。この曲、2010年の曲なんだ。

ドラマ『ストロベリーナイト』で、日暮れの空に飛んでいる機体が映るシーンは無かったと思うのだが(姫川玲子が午後6時前に高架を跨ぐ歩道橋の上で月を見るシーンはあったと思う。第一話だ)この曲は今わたしが見ている景色にぴったりだと思って少し震えた。竹内結子はもういないし、菊田(西島秀俊)はかっこよかった。そして飛行機はどこかへ行く。

EUPHORIAという曲は好きなのに、この言葉の意味を今まで知ろうとしてなかったことに気づく。あるいは調べたのに忘れていたか。そんなはずは。だって私は自分で調べた事は比較的覚えているのだから。

EUPHORIA.

a feeling of well-being or elation.

意味的にどこか感情が奮う印象。であるなら、穏やかな曲調の底には激情が眠ってるのだろうな、と10年以来の再解釈。

私の多幸感は激しさを伴わない。それを私は多幸感とは呼ばない気がする。安穏を志向する。一方で?

 

なかなか夜がやってこない。