ステーキのグラム数がわからない

 ステーキハウスの入り口に置いてある立て看板を見ながら思うことがある。それは「ステーキのグラム数がわからない」ということだ。数字としての重さはわかる。100gは200gよりも少ない。300gは200gより重たい。私がわからないのは、肉の塊という実体と、その重さとの関係だ。つまり、250gはステーキ肉としてどれくらいの量になるのかわからないということだ。

 これは一言に「経験不足」なだけだと思う。毎日毎日ステーキ屋で食べていれば自ずとグラムと肉の大きさの関係はわかってくるだろう。私の趣味が料理だったりお菓子作りだったら、もしかしたらグラム数と量のなんとなくのつながりは見えたのかもしれない。でも私は計量が適当になりがちな人間だ。

 そのステーキハウスは交差点の角にある。立て看板を見ていたら信号が赤になってしまった。なおも看板を見る。メニューを読む。

 テイクアウトでステーキ弁当を販売しているらしい。180gと250gと300g。グラム数が大きくなればなるほど値段が高くなる。なるほど。私はどの重さのものを食べればいいのだろう。180gと250gと300gの3つのパターンが並んでいるということは、少なめ、普通、多めと考えていいのだろうか。それは経験と照らし合わせての判断であって、もしかしたら、だいぶ少なめ、少なめ、ふつう、かもしれないし、ふつう、多め、だいぶ多め、かもしれない。わからぬ。

 信号が青に変わった。ステーキハウスとはさよならをする。「いつだったらステーキを食べれるだろうか」私は考える。次の有給休暇をいつにするか考え始めた。