シャボン玉

 私が住む場所からとおいとおい町にある名の知らぬ公園。カラフルで魅力的な遊具を見下ろす形で私はベンチに座っていました。私がいる場所は遊び場に対して少し高い場所にあるのです。

 上から降り注ぐ光に衣服はあたためられ、汗ばむ陽気となってきました。

 今日は朝から私は私であることを忘れられる時間を持つことができています。この上ない幸せ。そして穏やかな気持ち。

 ふと、きらきらと光るものを見つけました。私の目線の高さで漂う浮遊物。どうやらシャボン玉のようです。さて、どこからやってきたのでしょうか。目を凝らして公園を探してみると、どうやら誰かのお父さんがシャボン玉をたくさんたくさん生み出しているようです。

 ふわふわと浮遊する透明なシャボン玉。どうしてシャボン玉は落ちることなく空気中に浮かぶことができるのでしょうか。ほとんどのものはそこまでの高さに到達することなく割れてしまいますが、ごく稀に私の高さまでやってくるシャボン玉がいるようでした。あ、破裂してしまった。

 唐突に、胸がいっぱいになるような、ある種の充足感をおぼえました。ただシャボン玉を見ているだけなのですが。ふるるんと揺れるシャボン玉。パチンと割れて空気に溶けるシャボン玉。そして再び生まれる光を反射し吸収し不思議な虹色を帯びた透明の球体。その脆さと儚さと美しさに私は心打たれます。

 今日の天気は曇りだと聞いていましたが、頭上には雲一つない青空が広がっています。

 良い一日になるわね。自分に向けてそう呟くと、私はベンチから立ち上がり公園に背を向けました。これからまだ行くところがあるのです。