夜7時43分に道端の茶色の柵に寄りかかる私は、再生ボタンをタッチしてサカナクションの『さよならはエモーション』を流し歩き始める。缶コーヒーをコンビニで買おうかなと思ったけれど
そのまま そのまま そのまま
深夜の コンビニエンスストア 寄り道して
忘れたい 忘れたい 忘れたい
自分に 缶コーヒーを買った
レシートは レシートは捨てた
(サカナクション『さよならはエモーション』)
「缶コーヒーは自販機のもの」という気がしたからやめた。
風が強いし、ビニール袋は宙を舞う。森絵都『風に舞い上がるビニールシート』を思い出す。タイトルが素晴らしい本って、とても素敵だ。音楽を聴きながら歩く。自分が主人公にでもなったような錯覚に浸ることができる。和歌のことを考える。連想、発想、誘爆、被弾。音楽と言葉と感情を繋げる作業が楽しいと感じる。今日が何曜日であるか、私が誰であるか、今何時であるか。どうでも良いなあという楽しさを身に纏った私は家に着くと、さっそくメッキが剥がれてしまう。まあ、それはそれとして。