油を差す

 ジョグ。久々なので体は鈍っている。

 関節に油を差してください。ブリキの木こりはドロシーにお願いをする。『オズの魔法使い』の劇で私の幼馴染がブリキの木こり役だった。私は「関節に油を差す」という表現がとても気に入ったのだった。とくとくと関節に油が差される。如雨露のような油差し。どきどきしたことをおぼえている。油を、差す。それは回復を意味しているからなのかな。まあ、昔のことだ。

 走りながらブリキの木こりのことを考える。調子に乗ってペースを上げると苦しくなること。既に知っている。だから逸る心を押さえてゆっくりとゆっくりと走る。心を体に一致させる。体に心を慣らす。そうして走れば特に足を痛めることなくいい感じ。嬉しい。

 ブリキの木こりのことを考える。関節が滑らかに可動することはある種の喜びなのだろうと思う。油を差す。どきどき。