舗道

 回り道をして帰る。川沿いの遊歩道。舗道の敷石を見ながら歩いていると、次第にとろとろと眼前の風景がゆがんでくる。平衡感覚が狂い直線が歪んで見える。規則正しく並ぶ敷石は、錯視のような、そういう効果。そして足の裏から伝わる地面の感覚。多分敷石が平らには敷かれていなくて、ところどころ凸凹なのだ。油断していると足首を捻りそうで、意識を足元に集中させる。沢飛石を渡っているわけでもあるまいに、ほっほっほと慎重に足を前に運ぶのが楽しい。やがて遊歩道は終点になり、私は現実へと戻る。アスファルトの歩道。足早と往来する人々。信号。ああ、あの場所にあったのは静寂だったのだなあと思いながら、私の意識は夜の町に溶け込み、気がついたときにはもう体は家に着いていた。