物憂い味のガム

 星野源『湯気』を聴きながら歩く。アルバム『エピソード』はすごく音がシンプルで率直だと感じる。歩いている時にぴったり。

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 邪なる感情は虚(うろ)に入り込んでくる。黄昏時に漠然と悲しんでいるうちに、しんしんと心が冷えていく。その冷たさは生きていればこそのものだと思うから仕方がないねとは思いつつ、仕方ないからといって冷たさは消え去ってはくれない。

 ピアスをつけていなかったらピアスホールに菌が入り込んだようで、患部が熱を帯び痛む。またピアスがつけられればいいのだけど。左膝上には大きな大きな青痣ができて、足を前に出すたびに鈍痛がはしる。

 ATMがすっぽりとおさまった箱から外に出ると、私のうしろ、メタルフレームの枠にガラス張りのドアが大型鳥類の鳴き声をして一人勝手に閉まっていった。きゅるるるるとした鳴き声を聞きながら、私は無性に動物園に行きたくなる。前回行ったのは11月で自分が思っているより時が経っていて驚いた。柵とか檻とかは好きではないから悲しくなる一方で、動物園はやっぱり好きな空間だ。でもやっぱり悲しい。その悲しさがとても、なんというか、人間中心主義的なものをはらんでいる気がして、なんとなく嫌だ。

  そういう時もあるでしょう。物憂い気分もそういう味だと思って味わう祝日。