ジョグ vol.13 麦茶

 いつもならスポドリの粉末を水で溶かしたものをボトルに詰めて走るけども、面倒なので100円玉二枚をポケットにそのまま入れて家を出た。途中の自動販売機で適当なスポドリを買おうと思った。が、160円だったので(ポカリだし)その隣の麦茶130円を買った。その場で蓋をべきょっと捻って開けて飲んでも渇きは収まらない。口の中が唾液でなんとなくべとついたままジョギングを再開する。なんとなく体は重たい。一週間で一回という頻度は個人的には足りないと思っているので、少しずつでも回数を増やしていけたらいい。

 運動することそのものが楽しみであり、ストレス発散であり気分転換である一方で、もう一つ意識しているのが、もしこの先も生き延びることがあったときになるべく衰えのペースをなだらかにできたらいい、ということで。『きのう何食べた?』のシロさんって、自分がひとりでもやっていけるように健康に気をつけるようになって自炊を始めたんじゃなかったっけ(うろ覚えだけど)それと通じるものがあると思っている。でも、生に執着するのもなんか違うので(張り切ってジムに通う活力が怖い)ゆるゆる力を抜いて生活に体を動かすことを組み込みたいというのが私の願望。え、頑張ってないですけど、が理想。頑張らないように工夫する。

 スウェットを履いた男と女が、レジ袋をそれぞれ手で持ち、並んで道の真ん中を歩いている。男のくわえる煙草の煙が流れていく。匂いを感じた。ふたりを追い抜くとき、僅かに緊張する。頑張っているのえらいわねえ、とか。バカみたい、とか、正直その中身はどうでもいいけれど(なので何を言われてもいいのだけど)何らかの感想を持たれるということが嫌だったのだ。男と女は特に何も言わなかった。私はとても安心して、自分のペースでふたりをどんどん引き離していく。裏を返せば、私が走ることに集中してなかったということなんだよな。帰宅し文章を書きながら改めて振り返るとそう思う。