オレンジに照らされて

ウィンナーコーヒーとパウンドケーキ。お酒も提供している喫茶店の片隅より。

生クリームは正義。浮かべたクリームをスプーンですくって一口含む。背徳感を抱く甘さが口の中に広がり溶ける。カップに口をつけクリームと一緒にブレンドを飲む。クリームとコーヒーの二層は混ざることがなくそのままの状態で、なるほど、ウィンナーコーヒーのひとつの楽しみ方。

私の知っている、私が欲しかった鞄を背負った男がカウンター席に座った。私は結局同じ店の違うバッグを買ったのだけど、やっぱりあの鞄も良かったよな。欲しくなってしまった。落ち着いて、私。

ローテーブルは深い茶色。テーブルも欲しい。私の欲しいもの、私が完成する為のアイテム、あとはテーブル、それぐらい。

カウンターから包丁が小気味よく鳴る音。お腹が空いた。でもここでは食べないと決めている。また次の機会の楽しみにする。

オレンジの柔らかな光が水のグラスを照らしている。ランプシェードは手製なのか味のあるデザイン。5枚の花弁がたくさんあしらわれている。

そういえば日中に調べた「齟齬」が書けるだろうか、ノートに書いてみる。書けた。昨日練習した「躊躇」は? 書けた。良いことである。

男と女が入ってきてテーブルについた。男は家では勉強ができないタイプらしい。私は逆に外では勉強しないなあ。外で勉強は、なんだか勿体無い。他にやりたいこと、ある。

見開き1ページを使って、とりとめもないこと書き、気が済んだので帰ろうと思う。本当は別のお店に行こうと思っていたが、通りかかった雰囲気が良かった。生きるって、予想ができなくて面白い。