ムクドリ

 道を歩いていると、車道挟んで反対側から音楽が聞こえてくる。
 一体何だと思っていると、高校生以上、もしかしたら社会人かもしれない、それでも若い男たちが自転車に乗り通り過ぎていく。その中の誰かが音楽を大音量でかけているのだろう。例えば車の窓を全開にしてダンスミュージックを轟かせる、そういう光景には出くわすことがあるが、あの自転車バージョンと言っていいだろう。私は一言、

「だせえな」

と呟き、彼らの進行方向とは反対へ進む。私は泳いだ後の眠気と疲れで機嫌が悪いのだった。普段はダサいかイケてるかまでは価値判断しないのだが。
 小さくなっていく賑わいは、なんだか、夕方になると町の大きな木に大挙して押し寄せるムクドリの喧騒に似ていた。

 

 工場裏の小道を歩いていると、少しでも涼しい風を取り込もうと道に面した窓を開け放っていた。その窓が開いているのを私は初めて見たもので興味深かったのと、日陰でどことなく陰鬱な雰囲気が漂っていたのも良かった。見上げれば空が細長く切り取られていて、影の中から見ると空の青は一層濃く見えた。夏の空の色の濃さは好き。

 工場裏 涼風引く窓 青が濃い

 

 ジョギングから帰る道すがら、風は涼しい。日中が暑い分、夜に吹く風の涼しさが映えると思う。ぼんやりと夜の空に浮かぶ月はおそらく満月ではない。煌々と輝くさまを例える食べ物は思いつかないが、指でつまめるサイズで、順当にいけばそのままチェーンでもつけてネックレス行きか、しかしあえてぱくりと飲み込みたい、この指でつまんで飲み込むのは『チェンソーマン』のコミックス発売記念Teaserから得た着想。ちなみに『チェンソーマン』は読んだことがない。「胸から出てるチェンソーの紐」という描写が駄目で(心臓からチェンソーの紐が外に出ていると想像すると、どうしても動悸がして気分が悪くなってしまう)。

 夏の月 指でつまんで ぱくと嚥下

 

  鰻は自分から積極的には食べないが、鰻の蒲焼を食べる時は山椒をかける派だ。鰻を食べるときは山椒をかけますか?という、細かな情報を聞きたいことってあるよなあ、ということをふと考えたので。聞いた情報を日記に書くかまでは知らないけれど。そもそも日記を書く人って少ないのかしら。What is favorite food? ではなく、Do you like ~?でYes or Noで聞きたい気がする。その差はよくわからない。

 青山椒 好きかと尋ね 日記書く

 

 散文の中に俳句を織り交ぜるスタイルで書いてみた。というか、作った句の解説をしてみる。結構楽しい。写真を挟み込む感覚と似ている。写真は撮れるもの撮れないものがある中で、俳句はもう少し自由、自分がハッとした瞬間を句にすればいいので、写真よりいいかもしれない。