野萱草

7月某日

 歳時記を買った。来月にでも買おうと思っていたのだけれど(楽しみは分散させた方がいい)たまたま訪れた書店で可愛い柄の箱に入ったコンパクトな歳時記があったのでつい買ってしまった。

 

7月某日

 何もしなかった。

 

7月某日

 今日一日何もできなかった。
 オリンピックが始まってしまった。どうすればいいのだろう、これから何をすればいいのだろうと考えながら、見識を深めたい、もっともっとたくさんのことを知りたい、自分の頭で考え判断し表現していきたい、それは私にできる1つのこと。
 人々は忘れるだろう。私も、忘れるだろう、今日、このときを。忘れたくない。でも忘れたら困ると思っても、忘れるだろう。ならばせめて形にしよう。そう思って私は買ったばかりの歳時記を開いた。

 野萱草 強かにただ今日を咲く

 萱草は忘れ草とも言う。忘れ草はDaylilyとも呼ばれ、一日しか花をつけない一日花とも知られている。オレンジ色の花を咲かせる。実際に見たことはないけれど、オニユリのように緑の海にパッと咲いていることだろう。その凛とした佇まいと、一日しか咲かなくてもしっかり花を咲かせるイメージと、いつかは忘れてしまう記憶と、それらを、今日この日考えたことになぞらえて一句。