ピクニック vol.2

 ピクニック。

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 江國香織の短編「ピクニック」が好きなのだが、この話にはピクニックが趣味の妻・杏子が登場する。私にとってピクニックは趣味ではないものの(「趣味」と言えるラインはまだまだ遠い)確かにピクニックはいい。ただただ、いい。

 キティちゃんのキャリーケースのことをふと思い出した。

 昔昔、ピンク色のキャリーケースを持っていたのだ。祖父母の家に行くときはキャリーバッグに何かを詰め、車の荷台に載せてもらった。

 芝の上にレジャーシートを敷き、リュックを肩から下ろし、テイクアウトした食べ物が入っているビニール袋を置いて、スニーカーを脱ぐ。そこは私の島で、船に乗り込んで大海に躍り出るわけでもあるまいに、持っているものでやっていかなければいけないのだと、半分怖くもあり、半分わくわくする。

 あの頃も、キティちゃんのキャリーケースが私のすべてだった。今はリュックに入っているものが私のすべて。

 足を延ばしビニール袋を手繰り寄せると、中から食べ物を取り出して昼食にする。木陰を選んだけれど、太陽は少しずつ少しずつ移動して、木漏れ日がちらちらとシートの上で揺らめいている(それは波)。リュックから文庫本を取り出すとスマホのタイマーを30分にセットして読み始めた。

 ピクニックはいい。これ以上暑くなると厳しいけれど、また涼しくなるのを心待ちに。