寂寞

 牛乳を買いに夜の中に飛び出す。アスファルトは濡れ、黒く艶やかに光る。フェンスの針金から雫が落ちる。街灯に照らされ、もしかしたらイルミネーションより綺麗かもしれない。湿度が高く蒸し蒸しとした暑さの日中とは打って変わって、ひやりと冷たい空気。嬉しいと感じる。まだ夜は涼しい。

 ホワイトボードは新宿の小田急にある伊東屋で買った。ホワイトボードが欲しかったのだ。少し使ってそれっきりになっていたものを再び使い始める。

 2021.5.20(木)

 ・モノガミーとポリアモリー

 ・肩の筋トレをすること

 ・TO1の新曲がリリースされる

 ・ホワイトボードって砂浜みたい

 ・寂漠とは

 ・フカヒレ

 こんな感じである。まるで脈絡のないキーワード。

 牛乳を二本買う。カフェオレベースは牛乳で割るものだから。ショルダーバッグを前にまわし、計2リットルの重さに抗うように私は斜め上を見る。そこには灰がかった黒色の厚い雲。脇腹の裏側が痛い。おそらく筋トレをしたときに痛めたのだと思う。筋肉痛の痛みではない。

 「寂寞」を「寂漠」と間違えて覚えていたみたい。でも意味は通じる気がしない?広々とした砂浜。荒野。寂しさの砂漠。

 

  ホワイトボードは砂浜のよう。指でなぞって書いた文字は波がさらっていく。今日書いたものは明日の朝には消してしまおう。今この瞬間に決めた。そして明日は明日の私が何かを書くのだ。脈絡もなく。書かれるものの片鱗ですら、今日の私は掴むことができないこの幸せ。