腕時計を買う。
初めて腕時計を買ったのは、まだ学生だった頃のこと。アルバイトで稼いだお金、誰からの贈り物でもなく自分で買った時計。黒のデジタル時計。アナログ時計よりデジタル時計が好きで、可愛い時計よりかっこいい、アウトドア仕様のものに魅かれた。
時計を意識したいか?と聞かれたら、それはNoだろう。時間に追われたくない、あくせくしたくない、時計を見たくない。間違ってはいないけれど、それが一番の理由なのだろうか。どうだろうな。あまりピンとこない。
でも、今回腕時計を買った理由なら答えられる。
それは時間を確認するのにいちいちスマホを取り出したくないからだ。
3月の私は出かけるのだ(といってもあと1週間で終わる3月だ)。出かけた先で時間を確認するためだけにスマホを取り出したくない。それが今回私が腕時計を買った理由。そして悲しいことに昔に自分が買った腕時計はどこかに行ってしまった。どうして腕時計というのは失くしてしまうものなのだろう。
仕事の合間に外に出る。暖かくなり外に出かけやすくなった。私は腕時計をしていて、30分くらい歩ければいいなと思う。日の光を浴びたい。風をからだに通したい。でなければ、私が生きている意味なんてない、ぐらいに思う。割と強めの感情。
昔の自分が買ったものと同じような腕時計にしてしまった。黒のアナログ時計。私はあんまり変わらないねえ。この時計は大事に大事に使おうね。自分と約束する。
靴を新調すれば外に出てスキップしたくなる。鞄を買えばたくさんの荷物を入れて外に出たくなる。腕時計を買えば手首に通して10歩歩くたびにニコニコと目を向けてしまう。私はアウトドア派だったんだなあ!と最近ようやく自覚するようになった。私は、とても、アウトドア派です。
腕時計を買う。それは外の世界に通じる扉のようなもの。外に出る時、私はこの時計を身につける。それが私の好きなこと。好きなやり方。