川が流れる街

 その街には川が流れていた。

 時刻は22時半。川沿いの道を私は一人歩く。等間隔に並ぶ街灯を綺麗に思い、ポケットからスマートフォンを取り出して撮影を試みるも、自分が綺麗だと思ったものを満足に撮ることが出来ず二、三枚だけ撮って諦めてポケットにしまう。

 どこまでも続いていくような街灯の並びに世界の果ての無さを感じる。街灯は夜にだけ灯る。だから今私が感じた果てしなさを感じるのも夜限定のこと。夜限定だなんて、なんだかワクワクするね。美味しそうだと思いませんか。

 対岸の道は車の往来が激しく、川の水面にヘッドライトが浮かび上がって見える。風が強い夜。川は風の通り道で、吹きすさぶ風が絶えず水面を撫でそのたびに波が起こる。赤黄橙の光がどこまでも深く濃い水に揺れるのが見えて、それがこれまた美しかったから写真を撮りたいと思うのだけれど、街灯を思い出しスマホを取り出すことさえしなかった。代わりに私は飽くまで川を眺める。