塗り潰せ

 重たくて、分厚くて、箱みたいなメモ帳に、少し前から文章をただ書いている。日記ではなく、即興のテキスト。例えば東京タワーについて。例えばホタテの貝ひもについて。使うボールペンはuni-ball Oneの、インクはブルーブラック。楽しい。そこで書いたものを少し修正して載せてみる。

塗り潰せ

 貧すれば鈍する、という。貧乏になると性質や頭の働きまでも鈍くなる、という意味らしい。そういうこともあるかもしれないと思いつつ、全面的に首肯することもできない。富んだらそれはそれで人間は狂う気もする。

 望むものすべてを手に入れることはできないと昔から思っていた。だから、自分の思想は自分の思想、他人の思想は他人の思想で、それをどうにかしようなんて思えなかったのだが、どうも私たちには相手を自分色に染め上げたくなるところがあるらしい(程度の差はあれ)。スプラトゥーンでびたびたに世界をペンキで塗りたくるように。そうしたところで、息苦しさしかないと思うのだけど。

 甘美な感情だと思う。相手を意のままにするというのは。相手の尊厳をめためたに蹂躙するということは。でも、その果てにあるのは虚無だろうと想像する。

 読解力。そうかあ、そんな風に読み取るのかあと、げんなりすることがある。私の解釈も一つの解釈。正解なわけがない。ただ、疑うことができるのか。あなたのその解釈は、疑いの上にあるものなのか。絶対的なものだと思っていないか。その言葉に香る「絶対的」に私は顔を顰める。信じる人間は怖い。

 世界的な潮流というものを私は知らない。語ることができない。その上で思うのは、様々な問題・衝突の根っこには、疑えないこと、がある気がする。私たちは疑うことができるのか。ひとつに固執することなく、極端にならず、バランスをとって生きることができるのか。そういうことを考える。自分は疑うことができているのか。極端になることをひどく恐れている。塗り潰すことは、強く言ってしまえば、悪だ。

 

 ここまで。だいぶ書き直してしまった。へへ。

 私のとても好きな曲のひとつにALKALOIDのVERMILIONがあって、

想像力の限界を 超えて得ればいい意義について

そのカードに描こう 歯向かう白を塗り潰せ We are soldiers

という歌詞がある。塗り潰せ。やはり、高揚感をもたらす言葉であり行為だなと思う。難しい。そこに呑み込まれないように。