スケッチ vol.1

 目の奥が鈍く痛む。頭の中がぎゅうぎゅうしている。喉が渇いたし眠たい。たぶん横になった方がいいのだけれど、うーむ、運動したいし買いたいものもあるから、ま、いいか、もう少し頑張って、私。

 母性とか庇護の感情について考えていた。そういうものだと思うけど(たぶんそういうメカニズムなのだろうけれど)何かを愛するがあまり何か以外のものを虐げるとか、そこまではいかないにせよ押し退ける行為ってどうなの、何なの、許されるのと思ってる。私の中の、何かを慈しむ感覚が弱いから理解できないだけですか。

 

 横になってうつらうつらしていたら、そのまま1時間半くらい寝てしまった。昔から昼寝をしない人間だったな。疲れが澱みとして体に残っているような重たさ。振り払うようにして起きなければならない、この苦痛。そうね、毎日6時間以上寝ることで回復しているものだもの、1時間半くらいでは回復しきらない。

 

 セブンイレブンのフランクフルトを食べる。近所では毎年お祭りがあって、お祭りでは屋台が立ち並んで、そういうときに買うのはきまってフランクフルトで(300円くらい)そうか、ここ数年はお祭りやっていないねと思った。フランクフルトは、加工肉って感じの味でおいしかった。ななチキと迷ったけれどフランクフルトの方が安い。

 

 春。道を歩いているとレモンイエローのコートを着た婦人が交差点を渡っていた。あまりの鮮やかさと不可能性に虚を突かれる。つまり私はあのレモンイエローのコートを着ようとは思わないけれど、という不可能性。綺麗な色だった。菜の花の黄色を少し柔らかくした色。婦人がそれを着ることでたのしい気分になるなら何より。

 また別の日。今度はショッピングモールに入ってるチョコレート専門店のイートインスペースにて。見事な紫色のアウターを着て、家族だろうか、談笑している婦人。これもまた私の不可能性。春は人々の洋服の色彩が鮮やかになる。オレンジがかった赤いジャケットがアパレルのハンガーラックにかかっていたことも思いだした。

 

 ポカリスエット900mlを希釈しながら飲む。先日、炭酸水のペットボトルを一口飲んで空いたスペースに鏡月を注いでまた飲んで鏡月を注いでまた飲んで、というのをやっている人を見た(動画で)。あんな風に私もポカリスエットを少し飲んだら水を入れてまた飲んで水を入れて、どんどん薄めていく。

 

 クリスティーの『鳩のなかの猫』を読んでいる。ポアロが出るらしいけれど、200pを超えてもまだ登場しない。話は面白い。読者だけが持っている視点(宝石の行方)が物語の底に通っている感じ。コンクリの中に通っている鉄骨みたいな、隠れたけれど確かな存在感。それがすごく効いている。スパイスか。

 クリスティーが描く人物のパターンはいくつかあって、中でも聡明な女性が事件の渦中にいること多し。『鳩のなかの猫』だと女校長やその秘書はその筆頭か。女性の描かれ方を興味深く感じる。どことなく恩田陸に通じる気配。頭が良い人たちの話。それを好むというのがどういうことなのか。考えていてまったく嫌になる。