ロールケーキ

 5kmほど歩いたり走ったり、そのあとはランジを一通りと腕立て腹筋スクワットで土曜日が終わる。

 

 私が私である宣言にもういい加減飽き飽きしていて、だから自分語りはもうやりたくない、その沼にはハマらんぞ!と決意するのに次の瞬間には容易く崩れてしまうものだからもう不快。結局私はまだまだ修行が足りていないわけで、自分に固執している、諦めきれていないのだろうと思う。

 FLOのロールケーキが美味しかった。生クリームの中にフルーツがたくさん散りばめられていて、歯で果肉を押しつぶすと、じゅわっと生命が弾ける。そこに生クリームの甘ったるさがやってきてロールケーキの外皮がそれを包み込んでくれるというわけだ。

 ロールケーキの甘さについて考えられればそれでいいのに、と思う。ロールケーキのことについて考えたい。自分のことは考えたくない。

 

 黒の万年筆が欲しい。私だけの。インクは今までだったらブルーブラック一択だったけれど、今この瞬間の私は黒インクが欲しい。黒のボディ、黒のインク。そうして真っ白なノートをひらいて、私はただただ欲望のままに書き綴る。気が済むまで書いた文章は、後から読み返しても結構面白い。ぜったい有意義な時間になることがわかるのに、しかし、私はこの作業を進んではしない。黒の万年筆は持っていないにしても、代わりとなる筆記具はあるだろうに。実際手をつければ楽しいのに、気が乗らないこと、たくさんありすぎて勿体ない。惜しむ気持ちがさらに私の心を固くする。困ったものだ。

 

 私であることが面倒。私であることを証明するのが面倒。空気になりたい。水になりたい。風になりたい。さっぱりしたい。肉と脂と骨の私はそれだけで重たいことがわかり切っている。空気になりたいときは、物を捨てたくなる。明日は部屋の掃除をするつもり。たくさん物を捨てることにしよう。