聞き上手

 数年積読していた、聞く技術に関する本をふと読んでみようと思って、平積みのタワーから引き抜いて本を開いた。いい雰囲気がする。

 導入で「あなたは何故聞き上手になりたいのですか?」という問いがあった。その答えはあなたがこの本を読む中で立ち戻るべき原点になるものなので、ここで考えてみましょう、とのことだった。

 考えてみた。

 私は、人の話を聞くことがあまり好きではないのだと思う。情報を得るという意味では、好奇心がある方だから人の話を聞いていたいが、相手によっては、その人の感情をただただ処理する機械みたいに自分のことが思えて、そのことに苛立つのだと思う。どうして私があなたの話を聞かないのいけないの?あなたは私の話を聞いてくれない、理解しようとしてくれないというのに。人の話を聞くことは、我慢を強いられることだと思うなら、それはすごく不幸なことだと思った。

 私の不満自体はあっていいと思う。一方でそれを相手に押しつけるのは違うと思っていた。満たされないなら、別の方法で満たすことが私にはできるはず。

 人の話を苦もなく聞ければいいなと思っていた。そうすればもっと楽に、もっと楽しくなるだろうと思った。私は私の為に聞き上手になりたい(利己的な人間なのだ)。でも、ちょっとは相手を思った方がいいのかしら。そう、そういうところが駄目なのかもしれない。

 それが私の、聞き上手になりたい理由。