秋も飽きも

 途中で読むのをやめてしまった『平家物語』(古川日出男 訳)を再び読み始める。何故? 何故だろう。見てもいない「鎌倉殿の13人」の影響かもしれない。でも32回目は再放送で見た。突然大きな声を出すものだからびっくりしてしまったけれど、それは話全体を考えれば些末な問題である。どの登場人物も目が印象的で、引き込まれてしまった。ダークサイド北条義時、非情であるけれど嫌いじゃない。権力闘争については何故こんなことをしているのかが理解できなくて(理屈はわかるのだけど、実感に基づいて理解することはできない感じ)「平和が一番なのになー」と私は思う。自分がどんなことに幸せを感じるのかを理解しておくのは大事で、あれやこれや権謀策略にひりひりするのが楽しいところもあるのかなあ、わからんけど、そう生きざるを得なかったのかもしれない、そういう生き方しか知らなかったのかもしれない、でも物語としては超おもしろいよね「鎌倉殿の13人」。感情が大きすぎて、ノックアウトされ、昼寝しました。寝たらだいぶ気分が良くなった。

 私は分厚い本が好きだ。『平家物語』はすかっとした銀杏色の装丁がいい。以前、「10万円の臨時特別給付金が支給されたら池澤夏樹の日本文学全集を買うんだ!」(お値段9万円強)というツイートを目にしたことがあって、その気持ちがよくわかる。ブランドのバッグを買うよりは断然日本文学全集だと思う。

 祇王のところまで読んだ。一日一遍、少しずつ読んでいる。相変わらずアイドルのトレカを栞代わりに使っている(今回は天満光という黄色がとてもよく似合う子のカード)。

 飽きやすい性格だけれど、もうそれを嘆くことはない。ネガティブに捉えるくらいなら飽きやすいことのメリットを存分に享受した方がいいと思うから。

 部屋に迷い込んできた夜の風を感じながら、飽きたものに再び出会える秋になるだろうかということを考えている。