短歌
空っぽの月が浮かぶ 空っぽの私がベンチに腰かける夜
急いでいるわけではない。月を見たい気分になったのでベンチに腰掛け空に浮かぶ月を眺める。と、雲が流れて月を隠してしまった。月を飲み込んだ空がうっすら柔らかく発光する。月があり、星があり、その先には広大な宇宙が広がっているのだと、私は一人感動する。
月を見ていた - 透明で不可能性
Aさんの訃報が流れた朝七時 乗客みんな「共犯者」だね
電車に乗っているときに誰かの訃報が速報で入ってきた。スマートフォンを眺めている人はきっと今自分とおんなじ情報に触れている、と思ったら立ち現れる謎の連帯感。こういう形で連帯したいわけではないのだけれど。
陽光を浴びて叢立つクローバー緑に埋もれる骸となりたい
クローバーのこんもりとした群生に白骨化した自分が埋もれている図が浮かんだもので。そういうのも悪くないが、まあ白骨化する前に見つかってしまうだろう。
夏至が近いそんなある日の夕方に歩けば気づく(PM)6時の形
日が長いと夕方の六時でも明るくて、冬だと疾うに闇に飲み込まれているよなあという感慨深さ。
晴れた日に「ロビンソン」を聴く、歩く たぶん「ビール」とおんなじ味だ
私はビールが飲めないのですけどもー。
俳句
夏の露掬びて口へそして死のう
私に画力があるのなら絵にしたい。
冷めきった珈琲澱む梅雨曇り
淹れたはいいものの、口をつけないまま放置していた珈琲(ミルク入り)は澱んでいた。梅雨の曇り空と似ているね、という話。
毎日短歌を詠むとよろし、みたいなことが短歌入門に書かれていたので、なんとか毎日短歌か俳句のことを考える時間を捻出しようとしている。大体15分ぐらいでささっと。歌集を読むと「どうしてこんな言葉が出てくるのだろう」という歌ばかりだ。