黒はんぺん日記

 生きていて、「眠れない」ということがほとんどないということはとても恵まれたことであるということを私は知っている。寝つきもとてもよく、一度眠れば朝までぐっすりと眠ることができる。この性質は私の活動性をそのまま担保してくれている。

 が、今日に限って途中で目が覚めた。スマホの時刻を確認すると2:21だった。絶望的な気分になる。どうやら音が気になったらしい。耳栓代わりにイヤホンをつけて眠れるか挑んでみたけれど、どうやら駄目そうだった。仕方ない。翌朝のことを考えると恐ろしいが(この休日は普段よりよく動いた分、いつも以上に休まなければならないとわかっている)眠れないものは仕方ないのだから、眠れそうになるまで起きることにした。

 頭がおもたい。変な夢を見たわけではないが、自分の脳が三角で黒色のはんぺんのような感覚があった。三つの角が頭蓋骨を圧迫していてきりきりする。はんぺんだから柔らかいだろう、圧迫はしないのでは?と思うけれど、とにかく三角で黒ではんぺんなのだ。はんぺんは日中に見たコンテンツの所為だろう、おいしいおでんが食べたい。できれば刻んだ紅ショウガが入った練り物が食べたい。舌の上で爆ぜるひりつきが欲しい。というか、昨日はろくにものを食べてなかったことに気づく。出かけると食べることがおざなりになる。

 自分の脳みそがやや平べったくて丸みを帯びたあのフォルムはないとしたら。脳みそは本当は三角で黒のはんぺんみたいな柔らかさで、頭蓋骨の中に無理やり押し込められていて角がぎゅっと曲げられて。だとしたらそりゃあ痛いだろうし鈍くおもたい感覚があるだろうと思う。なんとか解き放ちたいけれど、その為には分厚い骨を砕かないと無理だなとかなんとか考えてもなお頭がおもたい。困ったな。

 時刻は3:04。ますます冴えていく思考に、もうこれは眠ることを諦めた方がいいのかもしれないと思い始める。休み明けというのは嫌いではないが苦手だ。自分を立ち上げ直さなければならない。私に社会性を。

 「立ち上げる」というのはいい表現だ。波に乗る。波を、乗りこなす。落ち着いて、深呼吸をして。今までできていたことを信じて。そうして私は月曜日を始める。