夜空あるいは深海のような足

 夜空のように、あるいは深海のように、深い色をした、星々がプランクトンが煌めく色の万年筆を買った。

 色は即決だった。迷わなかった。ペン先の字幅をいくつか試して店員さんに言った(「これにします」)。私は青が好き。そして赤も好き。

 いつかしっかりとした万年筆を自分で買うと決めていた。万年筆を買おうと思って家を飛び出したわけでもなかったけれど、おそらくずっと無意識のうちにタイミングを図っていたのだろう。その日がたまたまそうだったというだけ。

 これでたくさんのことが書ける。今までも書けたし、これからも書いていける。筆記具は私にとっての足。日常の些末な出来事を、感情を書いているだけだけれど、それでも嬉しかった。従来使っていたものより少しだけ軽い気がする。気軽に使えそうだ。

 これで最低限欲しいと思っていたものは手に入れてしまったような気がするが、私は他に何を望もうか。肉体があり、脚があるならどこへでも行けそうだが。

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 試し書き。少しインクが薄い気がするが、まあいいだろう。あと、所々インクが擦れたのと日が月みたいに見えるのはご愛嬌。書くことが生活に組み込まれている記述が好きなのだと思う。書写は緊張するね。音ゲーでパーフェクトコンボに挑戦するのと同じ緊張感。しかし、時々であれば緊張感も悪くない。スリリングな感覚は、生きていることを実感できる。