カラオケ

 寂しがり屋なのだ、とふと思う。狂おしいほど恋しいとか、そういうことは思わないのだけれど、しまっておいた思い出がふわりと香る瞬間、寂しさでたまらなくなる。あの頃に戻りたいとも、今会いたいとも思わないのに不思議だね。香水のように思い出を味わう。そういう楽しみ方が私は好き。

 カラオケに行ったな、と思う。ふわっと香る。あの時歌っていた曲を、あの時なかったApple Musicで手軽に聴けて、それは薄いコーヒーのようで。

 私は楽しかったけれど、他の人たちは同じように楽しかったのだろうかと不安になる。何年も何年も前のことだと言うのに。私は楽しかった。あなたは楽しくなかった。そんなことが起こりうる、過去とは残酷な話。

 カラオケに行ったね。どうしてあんなに楽しかったのだろうね。開け放した窓からは雨の匂いがして、もう今日は眠たい。今日は眠たすぎる。