メルティショコラ

 ファミリーマートでメルティショコラというスイーツを買う。チョコのプリンに、同じくチョコレートでできた滑らかなソースがかかっていた。私は朝から甘ったるいチョコを食べる。レジでつけてもらった小さな小さなプラスチックのスプーンをカシャカシャと使ってプリンをひたすらに口に運ぶ。

 コンビニには花火セットが売られていた。もうそんな季節になるのか。でももしかしたら気が付いていないだけで2月のコンビニにも花火セットはあるのかもしれない。冬に河原で花火。なかなか風情があるとは思わないか。

 花火セットを買う人生と買わない人生があって、私はどちらかと言えば後者なんだろうなと思う。ないものねだりとはこのことで私は花火セットを買う人生が羨ましい。でも、きっと、花火セットを買う人生は、花火セットを買わない人生を羨ましがったりしないんじゃないかな、知らないけど。花火セットもまた私の不可能性。いいえ、不可能なことではない。さあ、今メルティショコラを持った手とは反対の手を花火セットに伸ばせ!そして掴んでそのままレジに持っていこう。人生は大きな分岐ルートを取る。花火セットを買ってレジ袋は有料化だし案外大きくて鞄にも入らず仕方なく手に持って出社する、パンクだとは思わないか。思う。けど買わない。メルティショコラだけ買った。

 私はメルティショコラは買うけど、花火セットは買わない(買えない)人間なんだなーということを、卑下するわけでも評価するわけでもなく、ごく自然な気持ちで考える。

 雨が降ってきた。私は傘を広げた。冷たい雨。