改札にて

 とろとろに疲れているなか駅と駅の間を30分ほど歩く。同じ道を歩いていた1週間前の私はハイパー元気な私であり、今日の私とは雲泥の差である。もちろん今日の私が泥。

 同じ道を歩いたからわかる。疲れていると本当に視野が狭くなる。何もないところで躓くし、挙げ句の果てには辿り着いた駅で本来乗るべき路線とは異なる改札をくぐってしまう。そのことに気づいて慌てて出ようとしたらピンポーーーーンと改札で引っかかる。交通ICカードでは入場した駅では有人改札から出る他ないらしい。

 とぼとぼと駅員さんのところへ歩く。

 すいませーん。〇〇に乗りたかったんですけど間違ってこちらの改札通ってしまいました。へらへら。

 そこに居たのは愛想の良い私。対人用に設定した通常より2段階ほど高い声である。私、我ながら愛想が良い、この私は誰なんだろうと、不思議に思うくらいに。へらへらはある種の処世術なんだよな。