解体包丁

 近所の小洒落たパン屋さんのパン。四角くて外がパリパリしていて何層にもなった生地の内側にクリームチーズが入っているパン。舌に広がる甘ったるさを恐れながら口に含むと、思いのほか甘くなくクリームチーズの濃厚さとちょっとした塩気と外側の砂糖の甘さがいい感じに調和していて、私はそれをWONDAのBLACKコーヒーで胃に流し込む。美味しい。

 雨が降る一日だった。雨と雨の合間に軽くジョギングをすると体は重たくいつもより走るペースが遅いと感じる。そのうちウィンドブレーカーにポツポツと雨粒が落ちてきて、私は流していた音楽を止めると気密性が強いイヤホンも耳から外し、家に着くまでの間雨粒の音を聞きながら歩いた。ウィンドブレーカーは撥水性の素材でできていて、雨の丸い粒が車のヘッドライトを反射しキラキラと光った。

 

 さくじつから「人が嫌い」ということについて考えている。うっすらぼんやりと。特に何も書いていないのでまとまっていないし何かを発見したわけでもない。「人間が嫌い」なんて漠然とし過ぎている。それを構成する要素は様々でその気なのであれば一つひとつ解体し解きほぐしていかねばなるまい。研いだ包丁を持ち、肉と筋と骨の間に的確に刃を入れていかねばならない。少しずつ前後に刃を滑らせて断ち切っていく。刃は万年筆。切ることは書くこと。とりあえず解体できる肉は私の目の前にあることがわかった。解体したいかどうかは私次第で、正直どちらもでもいいなぁと思うけど、でも切ったほうが面白そう。だからゆったり解体作業をしていくことになると思う。