10円玉

 自販機に赤銅色の10円玉を一枚、また一枚と入れる。ジョギングをしていると、100円で緑茶を買うことができる自販機を知らず知らずに覚えていく。適当なスポドリの粉末を買って水に溶かしプラスチックのボトルに詰めればわざわざペットボトルを買うより遥かに経済的かつ地球にやさしいとわかっていながら、ジョギングの途中、自販機の前に立ち止まってはまた一枚硬貨を入れて緑茶とかアイスティーとか、おおよそ運動中には相応しくなさそうな飲料を買ってしまう。これがなんとも美味しいのだ。喉を潤す。

 世の中的に、硬貨とかお札は無くなる一方なのかもしれないが、「お金」という発明にダイレクトにつながっているなあと感じるのは、電子マネーよりは薄汚れた10円玉だと思う。

 自販機に硬貨を入れる。「あんな時代もあったね」と懐かしがられる日が来るのだろうか。そんな未来、予想はできるが実感が湧かないし、今ここにあるのは10円玉11枚と自販機と喉が渇いてへろへろな私の体だけであり、覚えていられるといいなあと思いながら、100円の緑茶のボタンを押す。

 

【今日の収穫】

  • 筐体
  • 登攀